#01 一汁三菜とはまさに黄金比

ご飯、豚の生姜焼き、ほうれん草のおひたし、里芋、それから味噌汁…
うん、全員分きっちり同量に盛り付けられたね。これでよし…。

皆ー、お待たせ。今日の晩ごはんが出来上がったよ

(ひょこ)
……。

ん? 一番乗りしておいてなんだい、その表情は。

……ルーシー、今日も味噌汁かや……?

ああ。今日の献立に完璧なバランスをもたらすのは他でもない。この“豆腐の味噌汁”だ。
また『鮭の粕汁がいい!』などと無茶を言う気かい?

むう、そうは言うてもな、もう5日も粕汁を口にしておらんのじゃ

君一人のワガママをそんな高頻度で聞いていられるか。
食材だって高級なものを要求するくせに…我らが魔王城は
高級紅鮭を毎日買えるほど潤ってはいないのだよ

ワガママて! 吾輩、魔王じゃよ!?

あのだね、僕の目に映るものは全て完璧でないといけないんだ。
君達の胃袋に収まることになる食事なら尚更……

見てくれよ、僕が今日準備した献立を。
量、配色、栄養バランス……どれを取っても完璧じゃないかい?
一汁三菜とはまさに黄金比だね! それを同胞のワガママで崩すなんてありえないよ。

そのようなことをせんでもな……

よいか、粕汁には主に「酒粕」「鮭」「根菜類」等が使われておる。
酒粕は酒の製造工程の副産物……ようは穀物で出来ておるから『炭水化物』
鮭は『肉』、根菜やねぎは『野菜』じゃ。

食事に必要な要素が全て揃っておるじゃろう!
つまり鮭の粕汁1品さえ用意すれば栄養満点じゃ、
お主、炊事当番の度にそうして頭をひねることもなくなるぞい

き、詭弁すぎる……ゼロカロリー理論ぐらい詭弁すぎる……。
というか粕汁だけでは腹が膨れないだろう

いっぱい飲むから大丈夫じゃもん

…………は~~

君ね、君は食事を用意しないから分からないだろうよ!
悪魔ひとが頭を捻って、時間をかけて用意したご飯が食べられないっていうのかい、
じゃあ今日はリカの夕飯は抜きでいいね?!

だ、だって……

せっかく均等に盛り付けられたのに、もういいよ!
僕が君の分まで食べてやる、ああっ美しくない!
君なんてサラダチキンでもかじってろ!

冷たっ! こ、これ、サラダチキンを投げるでない!

出てけ! (バタン)

いっ……!
……ああもうっ、なんじゃ! 吾輩だってルーシーのことなんか知らんし!
てか粕汁出してくれん部下共のことなんか知らんし!……


入口の前に魔王落ちてたんやが……

サラダチキンかじかじしながら
「知らん……知らんのじゃ……」って言ってて怖くて泣いちゃった

は?

……(食卓を見渡す)

……ルー

何だい、早く席に着きたまえよ。君が最後なんだから

俺明日が炊事当番なんだが。明日代わって

は?何を言って……

丁度夕飯の支度の時間と
ソシャゲのイベント開始時間が被った模様

……あと、多分この城内で
粕汁いちばん美味しく作れるのルーだから

あっ、おい……

……はぁ。
そんなに食べたいなら前もって言えっての……


高級紅鮭に、直売所の新鮮野菜、それから常備してある酒粕……
うん、今日もいい食材が手に入った

さて、炊事当番のローテが崩れたことだけは納得がいっていないが。
ワガママ魔王のために腕によりをかけようじゃないか

やってんねえ

あ、あれ? レイン。
イベント始まるんじゃなかったのかい?

緊急メンテ始まったンゴ……

ふ……はは。それは残念だったね

(レインのスマホ、ゲーム画面映ってるし。なんだよ嘘じゃないか)